―すべての患者・障害者・高齢者が安心して暮らせる社会を―


報告
〔全体報告〕
 11月9日(土)、今年で4回目となる「難病・慢性疾患全国フォーラム2013」がJA共済ビル(東京都千代田区)で開催されました。
 法制化を含む新たな難病対策は大詰めを迎えていますが、医療費助成をめぐり、10月29日の厚労省の提示案に対し患者団体側は負担額が大きくこれでは受け入れられないとして再検討を要請するなど緊張した情勢が続いています。そうしたなか会場には450名を超える患者・家族をはじめマスコミ関係者などが詰めかけ、ぎっしり満員になりました。参加・賛同団体も145となり、参加者とともに過去最高です。
 最大の焦点はやはり医療費助成問題だったと思いますが、私たちはフォーラムを通じて患者団体としての多くの問題提起や要望を政党及び政府関係者そして社会に広くアピールすることができました。

 開演前はスタッフも補助椅子を出すなど対応に追われましたが予定通り12時40分に始まりました。オープニングではラブジャンクス(ダウン症児者のエンターテイメントパフォーマンスチーム)が華やかなダンスを披露。続いて伊藤たてお実行委員長のあいさつ、そして「患者・家族の訴え」と続きご来賓のあいさつをいただいたところで前半を終了しました。

 伊藤氏はあいさつのなかで「病気や障害の違いを乗り越えて誰もが尊厳をもって暮らせる社会をめざしましょう。」と参加者に呼びかけました。

 「患者・家族の訴え」は4名の方が登壇しました。最初は京都から参加された島 睦子さんです。島さんはインスリンが出すぎて低血糖を起こす膵島細胞症という希少疾患です。血糖のコントロールが難しく失敗すると意識を失ったり場合によっては命の危険にさらされたりします。血糖を測定する機械や必要な資材は希少疾患のため保険が利かず自費購入するなど医療に関する出費は高額で月10万円を超えるといいます。しかし、現行の難病対策では医療費対象助成になりません。島さんは体の調子が悪くふらふらでも医療費を稼ぐために働かなくてはならないと話し「病名枠ではなく、希少難病の実情を把握した難病指定をしていただきたい。」ということを訴えました。 

 次は12歳のとき小児膠原病(SLE)を発症したという阿波連のり子さんです。思春期に発症した病気の症状も辛かったが、何より外見の変化、ステロイドによるムーンフェースや皮膚症状に当時は死んでしまいたい程、悩んでいたと話され「膠原病の調査・治療研究、また福祉サービスの周知徹底・就労支援と総合的な生活支援にも取り組んで頂きたいと思います。疾患の種類や数によって将来、夢や希望が持てなくなるようなそのような社会であってはならないと切に願っています。」と訴えました。

 そして次は息子さんが4歳の時に「若年性特発性関節炎(JIA)」の全身型を発症したという栗原光晴さんです。現在は高額な「生物学的製剤」のおかげで普通に学校に通うことができるそうですが、親としてあと6年で小児慢性疾患の医療費助成制度から外れてしまうことや病気を抱えての進学や就労の心配を訴えました。子どもの難病は20歳で医療費助成制度から外れますが、こうしたトランジション(成人期移行)問題は現在も解決の道筋が立っていません。栗原さんは「社会的弱者である難病の子どもたちの笑顔を未来にも繋げられてこそ、日本の社会の未来にも繋がるのではないでしょうか」と訴えました。

 最後は幼い頃から疲れやすく16歳のときに重症筋無力症と診断されたという仲山真由美さんです。仲山さんは10年にも及ぶ自宅療養生活を乗り越えましたが、現在も免疫グロブリン治療のため定期的に入院しています。しかし、今年から難病者も利用できるようになった障害者総合支援法をきっかけにホームヘルプサービスを受け始め、また週に2日ほど北海道難病連札幌支部が運営する作業所で手芸の講師をしているそうです。そうした経験から「病気をもちながらも、適切な治療と福祉サービス、周囲の理解があれば社会参加することもできます。新しい難病対策が全ての難病患者、障害者に生きる勇気と自分らしく生活をするきっかけとなるよう願っています。」と訴えました。

 ご来賓には、厚生労働省から村木厚子事務次官が田村厚生労働大臣の代理として出席され、患者・家族の皆さま方から聴いたお話はしっかりと大臣に伝えたいと述べてから「総合的な難病対策の実現に取り組んでまいりますので、今後とも皆様のいっそうのご理解とご協力を賜りますようお願いいたします。」といった田村厚生労働大臣のあいさつを代読されました。そして、日本医師会及び東京都からいただいたメッセージが紹介された後、各政党を代表して出席された7名の国会議員からごあいさつをいただきました。

 議員名とごあいさつの中から一言ずつを紹介させていただきます。
・自由民主党(衆議院議員・党難病プロジェクトチーム事務局長 橋本 岳様)
「みんなに満足をしていただくのはなかなか難しいと思います。ですが、できるだけそれに近づいていけるように、ここにおられる皆さま方と力を合わせて私たち自民党もがんばってまいります」
(橋本議員は最初から最後までフォーラムに出席され参加者の話を聞いていただきました)

・公明党(衆議院議員・前厚生労働副大臣・党難病対策推進本部顧問 桝屋 敬悟様)
「今回の新しい法律ですが、一人でも多くの人に安心いただける内容になるように、最後まで皆さんのご意見、ご指導をいただきながらぎりぎりの線までがんばっていきたいと思います」

・民主党(衆議院議員・元厚生労働大臣 長妻 昭様)
「(医療費)の負担増や負担減についてあいまいなところが多いので、我々としても国会というオープンな場で明白にして、少しでも皆さまの期待に応えていきたいと思っております」

・日本維新の会(衆議院議員・厚生労働委員会理事 上野 ひろし様)
「病気の有無にかかわらず、この世に生を受けた人がそれぞれに持っている能力を発揮して生きがいのある生活ができる社会を作っていく、これは我々政治家の大事な役割だと思っております」

・みんなの党(参議院議員・厚生労働委員会委員 薬師寺 みちよ様)
「(難病対策について)どの政党も同じベクトル、同じ方向を向いているのであれば話は簡単です。後は皆さま方の導きを得ながら一つひとつ法律という文字に書き残していくだけだと思います」

・日本共産党(衆議院議員・党厚生労働部会長 高橋 千鶴子様)
「社会保障費の圧縮で助成対象を拡大した費用負担分を同じ患者に押しかぶせる重度者への加重な負担増と軽症者の対象除外など、負担増を強いられる患者が続出することはあってはなりません」

・生活の党(衆議院議員・党国対委員長 小宮山 泰子様)
「最近、消費税の増税をはじめ個人には苦しい生活になってきている。国家議員が力を合わせて予算を確保し、この国に生まれてよかったといえる難病対策の法律になるようにがんばっていきたい」

・社民党副党首の福島みずほ参議院議員からは、メッセージが届けられました。

 ここで前半の終了です。休憩時間はパネル展示で賑わいました。後半は「総合的な難病対策と法制化をめぐって」というテーマでシンポジウムが開催され、さらに特別決議の採択が行われました。

 シンポジウムでは、次の7名がそれぞれの立場から話されました。
 ・「難病対策の改革と法制化に期待する」
        金澤 一郎先生(厚生科学審議会疾病対策部会難病対策委員会委員長、国際医療福祉大学大学院長)
 ・「難病対策の改革に係る検討状況について」 
        田原 克志氏(厚生労働省健康局疾病対策課長)
 ・「小児慢性特定疾患児への支援の在り方について」 
        桑島 昭文氏(厚生労働省雇用均等・児童家庭局母子保健課長)
 ・「障害者総合支援法における難病患者等の支援の現状と今後」
        森岡 久尚氏(厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部企画課課長補佐)
 ・「会津地域における難病患者支援」
        吉村 まゆみ氏(福島県会津保健福祉事務所保健師)
 ・「総合的な難病対策の法制化についての患者の期待と懸念」
        森 幸子氏(一般社団法人日本難病・疾病団体協議会副代表理事 一般社団法人全国膠原病友の会代表理事)
 ・「小児慢性特定疾患児への支援と成人期対策」
        近藤 博子氏(難病のこども支援全国ネットワーク・親の会連絡会小慢対策WG)

 その後、討論に入りフロアから4名の発言がありました。特に印象的だったのは人工呼吸器を付けて参加したALS患者で30代女性の酒井ひとみさんです。酒井さんは、氏名を透明の文字盤を使って述べてから代読者を通して次のように訴えます。「私には小学生の子どもが2人います。このまま医療費負担が増えると、子どものためと思い昨年気管切開しましたが、呼吸器を外そうかと悩んでしまいます。呼吸器を付けたことを後悔しています」。短い中に込められたたいへん重い言葉です。会場には緊張した空気がながれます。
 おそらく行政関係者も国会議員も患者・家族も立場を超えて会場にいるみんなが「このままではいけない」という思いを共有したのではないでしょうか。こうした発言におされる形で、田原課長は「再度の見直しを行う」と明言しました。まさに、フォーラムの最大の山場といえます。また、患者団体を代表して登壇した森副代表理事と近藤博子氏は、シンポジストとして、JPAの要望、親の会WGの要望をしっかりとした口調で述べました。
 (シンポジウムの詳しい内容は、あらためて報告します)

 最後は、堀越晶子さん(つくしの会)から「今まさに難病対策の法制化に向かって前進しようとしている時期にあたって、私たちはその法制化が、難病とは誰もが罹りうる病気であり社会が包含すべきとした理念に則り、難病対策予算が大幅に確保される根拠となり、すべての難病患者・家族にとってより良いものとなるよう、より一層充実されるよう、国及び国会、関係各方面に強く要望します。」(最後のみ抜粋)といった特別決議が読み上げられ、拍手で採択されました。そして、小林信秋氏(フォーラム世話人、難病のこども支援全国ネットワーク会長)の閉会あいさつで終了しました。とても熱気のあふれる4時間半でした。
 終了後は、オプションでささやかな情報交換会(交流会)が開かれ、参加の親睦を深めました。
 このようにフォーラムは大成功でした。そして、こうした活動を経て、新たな難病対策が当時者はもちろんのことすべての国民にとっても「良かったね」といえるものになることを心から願い、私の報告を終わります。
                                                                                 藤原 勝 


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〈主 催〉「難病・慢性疾患全国フォーラム2013」実行委員会
〈事務局〉一般社団法人 日本難病・疾病団体協議会(略称 JPA)
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